12個の鍵 | ドクター鈴木・あめぶろ研究室

12個の鍵

 新しい家の「受け渡し」を受けた。


 親から何十年も前に譲られた株券の売却、微々たる火災保険といった原資のほかは全て借金という情け無い状態だが、住宅建設の資金を全て振り込み、やっと新しい家が自分のものになった。


 住宅ローンを組んだので、再び土地建物に「抵当権」が設定された。土地は実家の父親の所有物件だが、金融機関に「第一位」の抵当権がついた。家のローンが払えなければ、この土地は金融機関に渡る。もちろん建物の運命も同様で、手続きをした行政書士(飲み仲間)が、「早くローンを払い終えて自分のものにしてくださいよ」とアドバイスする有様。


 10年間、娘が大学を出る歳までローン地獄である。ま、とはいっても、いざとなれば今回のローンのために加入した生命保険があるので、自分だけで家族の命まで奪われる心配は無い(それで良しとする気はないが)。


 今日、住宅会社立会いで引渡しが行われた。工事の瑕疵の有無を確認して(って素人にはなかなかわからないが、一箇所だけ変な所を見つけた)、受け渡しの書類に署名した。


 引き続き鍵の受け渡しを行った。


 玄関5個、勝手口5個、遠隔操作用の鍵が2個。合計12個。一に大量の鍵を渡されて少しびっくり。実は今度の家は「暗証番号で開施錠できる」システムを導入している(引渡しの際、業者には判らないように家族だけが知っている番号を入力した)ので、本来は家に出入りするのに鍵は要らない。それでもせっかく業者が用意してくれたので、気持ちよく受け取った。


 子供たちもやっと実感がわいてきたようだ。家具も調度品も無いのっぺらぼうの家の中で寝そべったりしてはしゃいでいる。ここに机、ここに椅子。ベッドはこの位置。彼女らはそれなりに設計図を描いている。


 これからは今度の日曜日の大安に向けて引越し第一弾の準備である。業者に発注していた家具や電化製品の運び込み。その後は7日の大安に、実家に疎開させていた荷物の運び込み。即ち引越しは二段階の波状攻撃である。私も職場を休んでもろもろ準備しなければならないだろう。


 苦労した1年であった。1年前にはこの日の喜びを予想することもできなかった。新しい和室で畳のにおいをかぎながら、今夜はこれから始まる新しい生活を連想した。


 おっと、今週も避難先の借家暮らしだ。新天地での生活はもう少し先、しばらくお預けである。ではそういうことで。