国際会議 | ドクター鈴木・あめぶろ研究室

国際会議

 今朝出勤すると「お昼に会議。外国からお客さん。昼食出ます」とメッセージがあった。本学は本当にこういったことを急に設定する。でも暇なので(?)参加することにした。


 昼前の講義(何しろ最終講義である)が少し伸びてしまった関係で会議開始には遅刻したが、会議室に出向くと参加者がちょうど昼食に手をつけていた。室内を見渡すと皆さん上手に箸を使って食べている。すみません、遅れて、と挨拶をするとお客さんがた一斉に手を止めて立ち上がり名刺を持ってやってきた。


 おぉ、本学の名刺も今日が最後だ!


 そう感激しながらも、「客員助教授」の名刺と皆さんの名刺を交換することになった。


 読めない。いただいたのはハングルの名刺である。でも、「チョイといいます」「アンですよろしく」などと先方は日本語が上手。こちらも知っている限りの韓国語で応戦するが、余り通じない。


 会議の趣旨を良く把握していなかったが(ってそんな状態で会議に出るなよな!)、先方は韓国の国立順天大学のご一行様で、学内にいわゆる知的財産本部(韓国式には産学協働団というらしい)を作ろうとしていて日本の先進例を視察に来ている由。


 いや間違っても本学は先進では無いぞ!


 しかし会議に出て日韓のこの問題に関する考え方の違いが良くわかった。


 日本では「外部資金係」とか「研究協力係」とか産学連携の窓口がいっぱいあっておまけに知財本部などというインターフェースが存在している。韓国ではこういった業務は全て「協働団」が一元管理している。また、韓国の大学の先生方の特許は原則先生の管理(日本の国立大学法人では大学に権利が自動的に委譲される)ではあるがそれを民間に売った場合の税金は40%も取られるので、先生方が自発的に権利を「協働団」に譲渡し実施料の20%を団から受ける形(税金が安い)を取るのだそうだ。面白い仕組みである。私の知的財産本部での仕事は大学帰属の特許を民間移転することをやっているのだがなかなか移転先が見つからない。韓国ではまず先に先生が譲渡先を見つけてきて団に譲渡、という。つまりスキームも違う。


 なんだか本末転倒な話だが、韓国の先進例を聞いたら見習うことがいっぱいあるじゃないか!


 で、会議の後半はお決まりの愚痴の言い合い。韓国側では、「若者の首都依存が強すぎ、進学も就職もみんなソウルを目指す。順天大学は地方にあるので人材も集まらないし卒業後地元に人が残らないと」。日本でもちょっと前まで東京や大阪に人が集まったが今の学生は比較的地元志向だからという話をしたらうらやましがってくれた。


 それにしても韓国の先生方日本語がお上手である。帰り際、一番日本語が堪能先生にどちらで日本語を、と伺った。


 東京工業大学で化学を専攻し学位を得ました。


 なんだ、TITなら技術移転の先進であるぞ。本学に来なくても母校で全部わかるんじゃないの?と心の中で思った。で、「化学を専攻」が気になってさらに化学はマテリアルですかプロセスですかと細かいジャンルを伺った。


 バイオ系触媒です。


 あっちゃー!私と同じバックボーンじゃないか!驚いた。そのあとはお互いの専門に花が咲いてしまったのは言うまでもない。どこにどんな縁が転がっているかわからんなあと思った会議であった。


 技術移転関係の会議だから、と参加者に私を入れてくれた大学関係者にも感謝。本学のお勤め最終日(とはいえ、引き続き兼業で大学の籍は残るが)の良い経験だった。ではそういうことで。